「このお薬は在庫がないので取り寄せになります」——そうお伝えすると、がっかりされる方がほとんどです。わざわざ足を運んでいただいたのに申し訳なく思います。ただ、この背景にはここ数年続いている医薬品の供給の問題があり、薬局の努力だけでは解決できない部分があります。窓口では説明しきれない事情を、公表されている数字とあわせてご説明します。
取り寄せにかかる日数はお薬によって大きく異なり、一律にお答えできません。通常どおり流通しているお薬なのか、メーカーが出荷を制限しているお薬なのかで事情がまったく変わるためです。お預かりの際に、その時点での見込みを個別にお伝えします。お急ぎの場合は、別の方法をご提案できることもありますので必ずお申し出ください。
01いま、医薬品の供給はどうなっているか
厚生労働省が毎月、医薬品の供給状況を調査して公表しています。2026年6月の調査では、次のような内訳でした。
「限定出荷」とは、メーカーが出荷量を絞っている状態です。注文しても希望どおりの数量が入ってこないため、薬局側では在庫を確保しにくくなります。
原因はひとつではありません。厚生労働省の集計では、限定出荷の理由として最も多いのが「自社の事情」、次いで「他社品の影響」です。あるメーカーが出荷を止めると、同じ成分の他社製品に注文が殺到し、そちらも足りなくなる——という連鎖が起きています。特定の一社の問題として語れるほど単純ではありません。
02なぜ薬局は全部の薬を置いていないのか
日本国内で流通している医療用医薬品は1万5千品目を超えます。同じ有効成分でも、メーカーごとに別の製品として存在し、さらに規格(含量)や剤形の違いもあります。これを1軒の薬局がすべて在庫することは、物理的にも費用の面でも不可能です。
そのため各薬局は、周辺の医療機関でよく処方されるお薬を中心に在庫を組み立てています。当社の薬局はどの医療機関の処方せんもお受けしていますが、初めていらっしゃる病院のお薬や、使う方が限られる専門的なお薬は、お取り寄せになることがあります。
使用期限の問題もあります。取り寄せた分が使われずに残ると、期限切れで廃棄することになります。必要な分を必要なときに、というやり方にならざるを得ないのが実情です。
03在庫がないときに薬局がとる4つの方法
「入荷を待ってください」と言うだけではありません。状況に応じて次の方法を検討します。
1. 卸から取り寄せる
もっとも基本的な方法です。通常どおり流通しているお薬であれば、比較的早くご用意できます。ただし出荷が制限されているお薬の場合、注文しても入ってこないことがあります。
2. 同じ成分の別の銘柄に変更する
処方せんの記載によっては、同じ有効成分の別メーカーの製品へ変更できます。詳しくは次の項でご説明します。
3. 分割してお渡しする(分割調剤)
手元にある分だけ先にお渡しし、残りを後日お渡しする方法です。「今日から飲み始めないと困る」という場合に有効です。条件がありますので窓口でご相談ください。
4. 他の薬局から譲り受ける
薬局同士でお薬を融通し合う仕組みがあります。ただしこれは業界団体のガイドラインに基づき、譲渡・譲受の記録を残す必要がある行為で、いつでも必ずできるものではありません。近隣の薬局に在庫があるかを確認したうえで、可能な場合に限られます。
当社は薬局間で医薬品を融通し合う取り組みにも関わっており、その経験から近隣薬局との連携には力を入れています。ただし上記のとおり制度上の制約があるため、「必ずご用意できます」とはお約束できません。
04銘柄を変えるとき、勝手には変えません
「気づいたら薬の見た目が変わっていた」というご経験はないでしょうか。銘柄の変更にはルールがあります。
- 処方せんの「変更不可」欄に医師の記載と署名がある場合、薬局は変更できません。
- 記載がなければ、同じ有効成分の後発医薬品へ変更できる場合があります。含量の異なる規格や、飲みやすさが同等と認められる別の剤形への変更も、条件を満たせば可能です。
- 処方せんが一般名で書かれている場合は、同じ成分のお薬の中から選んで調剤します。
- 供給が不足している状況では、特例として後発医薬品から先発医薬品への変更も認められています。
そして、いずれの場合も患者さまにご説明し、ご同意をいただいてから行います。薬局が独断で変更することはありません。変更した場合は、処方元の医療機関にもどの製品をお渡ししたかをお伝えします。
お薬の見た目が変わることに不安を感じられる方は多く、それは自然なことです。気になったらその場でお尋ねください。元の銘柄をご希望であれば、取り寄せをお待ちいただく選択もできます。
05お急ぎのときにしていただきたいこと
- 「いつまでに必要か」を伝えてください。「今夜から飲みたい」のか「今週中でよい」のかで、ご提案できる方法が変わります。
- 手元の残りがどれくらいあるかをお知らせください。残薬の量が分かると、分割してお渡しするかどうかの判断ができます。
- 受診の前に電話で在庫を確認いただくのも有効です。特に、いつもと違う医療機関にかかられる場合や、専門的なお薬をお使いの場合。処方せんをお持ちいただく前でも構いません。
- お薬手帳をお持ちください。これまでお使いの銘柄が分かると、変更の可否をその場で判断しやすくなります。
取り寄せのご連絡は、ご希望の方法(お電話など)でお伝えします。緑ヶ丘薬局(055-927-2311)・鷹匠薬局 公園店(054-247-5611)のどちらも、事前のお問い合わせを歓迎しています。